フィルター or ノンフィルター !?

イタリアの生産者の間でも意見が分かれる事が多い、フィルターの有無について…

オリーブオイルを変質させず、そのままボトル詰めをする前の保存段階で保存する為には,という点についてはオリーブオイル業界の中では常に議論されてきた事である。

オリーブオイルの保存については、外的環境として理想的な環境においておく事、そして容器は、できることならばステンレスの容器で、モニタリングと調節ができ、酸化や変質によりオリーブオイルの持っている化学的、官能的、物理的性質を変化させてしまうような状況を防ぐのがベストである。

olio-verde 保存の間に起こりうる変質としては、脂肪酸の酸化が最も多く、ペルオキシド(過酸化物)が形成される。成分の破壊により、揮発成分が発生し、オリーブオイルの中で栄養補助(機能性補助)の役割のある成分が修正されてしまう。それ以外にも、酸化した欠陥である”ランチド”を招き官能検査で知覚されるようになってしまう。オリーブオイルの浮遊物、または保存容器の底にたまる澱が嫌気性発酵すると、化学官能的にも劣化してしまい、乳酸菌のClostridium(クロストリジウム属菌)
による発酵が起こりモルキアの欠陥を産み出す。

オリーブオイル生産の機械設備の技術イノベーションは進んでいるが、遠心分離による油分と水分の分離は十分ではなく、結果的に自然の不純物(果肉の繊維、コロイド成分、水分等)を取り除く事はできず、油分の中に懸濁した状態、またはミクロエマルジョンの形で残存し、オリーブオイルの性質を変質させ、濁って、ぼんやりとした状態になる。

この最後の側面は、残念な事に正しい知識のない消費者にとっては、”自然な商品”であることの証のように思われ、自然が持っている栄養成分等がそのまま保たれると思われている、しかしながら、実際には知覚的な質という意味では、取り返しのつかない効果が産み出されてしまうのである。

まず、保存の最初のステップとして、オリーブオイルの保存条件設定とも言える作業としては、移し替えとフィルターがある。

澱の除去

澱の除去は、先述の様に、水分、タンパク質と窒素が、酵素反応と発酵を引き起こし、それにより知覚的に欠陥と認識させる状況を引き起こす。(発酵、モルキア,腐敗、アッヴィナート酢酸化した臭い等)モルキア(油の搾りかす、澱)と、オイルの接触は、オリーブオイルの酸価度の上昇を引き起こすことにもつながる為、最終的な保管の前に、不純物を取り除くために、繰り返し移し替えを行うべきである。繰り返し移し替えを行う場合は最新の注意を払う。移し替えに使うポンプの影響でオリーブオイルの中に、気泡が作られないよう注意する。またこの作業を行う際には、容器とパイプの衛生状態にも注意が必要である。前に行った移し替え作業のオリーブオイルや残滓の影響を受けて、移し替えをしているオリーブオイルの、化学官能的な特徴に変質が起こるような事があってはならない。除去検査をする際に、気泡が起こるような作業を行わず、下層部に開口弁を設置し除去した澱が開口弁から流れ出るように底が円錐の形をしている容器だとリスクが少ない。経過判断や移し替えを続けるか否かの判断には、道具をつかってオイルに含まれる水分と不純物を計測する。

オリーブオイルの、油脂の部分と底に沈殿するおりの部分の分離は、オリーブオイルの中に含まれている成分と、保存の外的環境によって変わる。コロイド状の不純物と、水分は、搾油の方法や、粘性(脂肪酸とトリグリセリド)、オリーブの品種、オリーブの成熟度によって、おおよそ早く沈殿する。保存環境の気温が低いと、オリーブオイルが凝固し、結晶化される。続いて,気温が上昇すると、トリグリセリドが溶解し、容器の底に結晶に包まれた状態で搾りかすとして沈み、ゆっくりと溶けていく。温度の上昇が急な場合は、オリーブオイルは濁ったままである。

凝固に影響を与えるもう一つの要因は遊離脂肪酸:給水性のコロイドの凝固が多い場合にはより早く、遊離脂肪酸の値が非常に低い場合は逆のプロセスが起こり、その場合はオリーブオイルは長い間濁った状態のまま残る。澱の除去というのは、一度または複数回、容器を移し替える事により行うものであるが、多くの場合は、オリーブオイルの知覚的特徴の安定性を保証することにはならない。オリーブオイルがボトルや缶に移し替えられる前に化学知覚的品質が危険にさらされることに影響を与え、その後のシェフルライフ、つまりは、その製品が容器詰めされた後に貯蔵される期間の安定性に、影響があるといえる。容器詰めされた後のオリーブオイルが大手のチェーンなどに流通する場合は、特にそうである。だからこそ、容器詰めをする前に、状態を検査することは重要であり、特に、オリーブオイルの移し替えを行った状態でストックをしていた場合には、オリーブオイルの知覚(フレーバー)、化学物理的な変質の有無を確認するべきである。

他の手段

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代替作業や、移し替えの補完ということになると、フィルターをかけるというのが良く行われる作業で、目的に応じてフィルターのタイプを使い分ける。繰り返し移し替えを行った場合でも、微小なフェノール成分が分子レベルで油脂の中に溶けた状態で存在している。フィルターは、”表面的な”濾過、と”本質的な”フィルターに分ける事ができる。

一つ目の方法としては、フィルター自体が、多孔質の計上をしており、オリーブオイルの表面に浮遊している微小成分がフィルターに外部によって取り除かれる方法、もう一つは、フィルターが、抜け道のある多孔質の素材でできていて、オリーブオイルはそれを通過するが、固形成分や、コロイド状の部分がフィルターの内部の吸収素材にとりこまれるという方法である。オリーブオイルの化学物理的特徴という点に立ち、フィルターは両方の(表面的、本質的)目的に対処することができる為、実践でよく使われるものの違いは、使われるフィルターの素材によるところが大きい。

脱脂綿や、吸水性の綿のフィルターでは、濾過は遅く不連続であり、マクロ分子や粗い固形分のみが濾され、オリーブオイルが長い間空気に接触してしまう。このシステムでは、他のタイプと大きく異なる点として、オリーブオイルのフェノール成分に関連する知覚的特徴に、大きな修正が生じない、という点であろう。

珪藻土を使ったフィルターの場合は、薄い紙状のものを使ったプレスフィルターで、清澄化濾過を続けて行う事により、大量のオリーブオイルを濾過する事ができる。このタイプのフィルターは、珪藻土の部分で多量のフェノール成分が吸収される。

セルロース材をつかったプレスフィルターの場合は、濾過作業は、一度で行う事ができ、珪藻土を使って濾したオリーブオイルの清澄濾過としても使う事ができる。オリーブオイルのタイプや、混濁の度合いにより、セルロース100%か、他の素材や珪藻土を混合したタイプを使い分ける。

少しずつ普及してきているフィルターの方式として,袋状のフィルターとを使うものがある。機能性と、メンテナンス性もあり期待ができるもので、オリーブオイルの中にガスを注入することによって使われる方法である。このタイプは、非常に高い透明度を維持する事ができるとともに、自然のフェノール成分を過剰に濾過してしまう事がない。

フィルターをかけている間、長時間空気にさらされている事により、過酸化物価が上昇、フェノール成分や揮発成分の部分的な酸化が引き起こされる。これらのリスクを制限する為に、空気との接触を防ぎ、閉じたステンレスのシリンダーの中に、カートリッリ式のフィルターを使う方法や、窒素を注入した状態で空気中の酸素を除去してフィルターを行う方法等もあり、これらは、容器詰めをする段階で、大きな貯蔵安定性を示すことになる。

Agricoltura24より抄訳