イタリア北部ブレーシャで2014年に行われた実験について紹介しよう。2014年といえばイタリアのオリーブ栽培にとっては暗黒の年だったのは記憶に新しいだろう。この実験を行ったガルダ湖のオリーブ栽培者は、周囲の生産者がため息をつく中、小さな畑ながら微笑みが漏れるほどの生産量となった。
オリーブの木はたったの23本、今までに実をつけたことがなかった。品種はレッチーノで、理論的には自家受粉も可能なはずではあるが、冬の寒さで受粉促進に植えていた他品種は枯れてしまい、孤立した小さな土地に植えられている状態。この人工受粉の実験を行うきっかけとなったのは、近隣にあるキウイ農家の様子を見たのがきっかけで、キウイ栽培では、よく人工受粉の技術が取り入れられているからであった。内容はシンプルで、オリーブのいくつかの品種の花粉を採取し、低温で保存、開花の時期に実をつけさせたい木に吹きかけて、花の受粉を高めそこから結実率をあげようというもの。
オリーブは実際に、不結実の確率が非常に高い植物で、結実率を少し高めることに成功するだけでも生産面では大きな躍進となる。この実験を行うにあたっては、キウイに人工受粉を行う機械をつくるメーカーの技術を使い、オリーブ花粉を吸い込み、そしてその花粉を、受粉させたいオリーブ樹の花に吹きかけるということを行った。この様にシンプルな実験ではあったが結果は驚くべきものであった。小さな土地で栽培している23本のオリーブは、見事に実をつけなんと 1100kgの結実、1本あたり50kg弱のオリーブがついた。ロンバルディア州の1本あたりの平均結実が10Kgだということを考えると素晴らしい結果だ。集められたオリーブ花粉は、ペンドリーノ、モライオーロ、カザリーヴァ種のもので、受粉させたい木が開花するまでの数日間4℃で保存、そしてタイミングに合わせて花粉のみを、合計で1本につき約2gを2日にわたり2回散布した。
この2014年の結果を受けて、ロンバルディア州のオリーブ栽培者協会では、キウイ花粉散布機のメーカーとのコラボレーションのもと、2015年の開花に合わせより大規模な実験をすることとなっている。目的は、この技術を本格的にオリーブ栽培に活用できるのか、その効力を確認することである。
ロンバルディア州のオリーブオイルは、生産量が非常に少なく、一方で市場からの要求は年々高まっている。そんな中でごくわずかでも受粉率があがり、生産量が増えることは素晴らしい事。また、農業という観点でみてもロンバルディア州の環境では、オリーブ栽培にかかるコストは非常に高く、生産を維持することは容易ではない。この実験は3年かけて行われる予定となっている。
Fonte: Aipol – Cra-Gpg, Centro di Ricerche per la genomica vegetale